海藍『トリコロ』特装版

 我々は四年待ったのです。


 というわけで、休載したり、雑誌どころか出版社自体変わってみたり、作者が精神的にヤバい領域に踏み込んでみたり、ファンは超不安でやきもきしたり色々ありましたが、ようやく出ました最新巻。
 きらら時代の八重、真紀子に続いて、今度の表紙は胸のあたりの主張が実にあざとい由崎多汰美嬢(ハイエナジー)。 特装版でハイエナジーなら、通常版ではニンゲンに戻るのかなぁと考えながらもいやぁ実にけしからん。 なんだこの自己主張の強い胸部は。
 あざとい! 実にあざといな、メディアワークスは!


 ちょっと落ち着いて内容に触れますけど、これはもういつも通りの面白さで一安心。 若干絵が変わったような印象も受けますが、所謂萌え系4コマ漫画の走りにして、屈指の面白さで君臨し続けた海藍の実力は健在。
 あらためて思うことですが、海藍は本当に漫画が上手い。 連載1回ごとにストーリーラインを設定しつつも、4コマ一本一本の起承転結が実にしっかりしているのが素直に凄い。
 これは4コマの本質から言えば当然のことなのですが、ストーリー部分はしっかり描けていても、肝心の4コマの起承転結を蔑ろにしているものが多いのも事実でして。
 ドラえもんと同時にサザエさんを読んでいたような若干特殊な導入以来、様々な4コマを読んできましたが、これは果たして4コマでやる意味はあるのだろうかと疑問に思うこともしばしば。 率直な感想を言えば、キャラが可愛い、絵が上手いというただそれだけの要素で保っているような作品も決して少なくはありません*1
 そんな中にあって、トリコロという漫画は、起承転結の面白さという4コマ漫画本来の魅力の中に、作品世界の持つどこかゆったりとした空気*2、そして萌え系4コマでは最も重要とされるキャラクターの可愛さというファクターもしっかりと盛り込んでみせた*3稀有な作品だったわけで。
 この4年の間にも様々な4コマ漫画に触れ、傑作、駄作いろいろありましたが、そんな中でもふと思い立って手に取るトリコロや特ダネ三面キャプターなどの海藍作品の魅力は無類のものでありました。


 芳文社との間になにがあったのか。
 メディアワークス移籍後も、どのような苦労があったのか。
 ファンである我々にはただ待つことしかできない辛い時間でしたが、いまこうして最新巻を手にすることのできたことを素直に喜び、また数ヶ月先、メディアワークストリコロの表紙をにわちゃんが飾る日を静かに待ちたいと思います。

*1:きらら創刊以来こういう作品が増えた。 表紙買いの怖さはエロ漫画のアンソロジー並と言っても過言ではない。

*2:ストーリー部分含めて。

*3:独特の絵柄は好みもあるかと思うが。